ゆあでたを終えて:UT&drプチオンリー主催後記
はじめに
2021年2月27日〜28日にかけて、UNDERTALE&deltaruneのオールキャラでは初のプチオンリーを企画した。
本プチオンリーの特色として、赤ブーブー通信社の春コミ内で開催される通常のプチオンリー(以下「オフライン版」)の他、pictSQUAREでその前日にオンライン版プチオンリーを初めから併催する前提で計画していたことが挙げられる。
後に企画する方々のため、簡単に覚書を残しておくこととする。
発足の経緯
2020年の8/9、ちょうど企画していたアンソロジーの発刊直前の即売会が開催されていた。詳しい話は別記事にてまとめている。
mapleundertale.hatenablog.com
(こっちも大変だったのでよかったら見てください)
2020年当時はご時世が色々とアレだったため、即売会の延期が相次いでいた。また、この時点ではこのジャンルを対象とした目立った即売会の実施予定はなかった。
このジャンルには原作および界隈ともに「多大な思い出を受け取っていて、世話になっている」と思っていた。また、アンソロジーの今後の販路についても思いを馳せていた。そこで、「ないものは作ろう」精神でプチオンリーを発足させることとした。
何をしたか
- 本番までのスケジューリング
- オフライン版のための用意(最低限に)
- オンライン版のための用意(それなり。後に詳述)
- 記念冊子の発刊
- それに伴うあらゆる連絡
オンライン即売会について
今回、一番知見になりうるのはやはり「オンライン即売会」かと思う。
オンライン即売会を併催した理由としては、情勢の不安定さが挙げられる。最後のオンリーイベントからある程度時間を空けた2月末という真冬の時期に開催を決めたため、情勢については逆に「どうなってもいいように準備しておこう」という心積もりができていた。
赤ブーブー通信社内で開催されるプチオンリーはそれなりに今まで行われた実績もある一方で、オンライン即売会については去年活性化したばかりである。それに、規模や時期を自由に選べるので今後も界隈内で実施される可能性はある。
そこで、今回のオンライン即売会を開催するに至るまでの流れについて書き残しておきたい。
当日の雰囲気としてはtogetterにまとめているので、そちらを参照してほしい。
togetter.com
1. オンライン即売会プラットフォームを選ぶ
2020年前半から、いくつかのサービスでオンライン即売会が検討されはじめた。2020年下半期時点では、大きく分けて2種類の方式で開催されていた。
- 特設サイトやハッシュタグを使い、通販リンクを共有する方式(エアブー、エアコミケなど)
- バーチャル空間上に店舗を設営し、アバターで参加する方式(pictSQUAREによる即売会、ComicVketなど)
今回は、基本的に後者のバーチャル空間が存在する方式で検討を進めた。
当時、自分が実際に体験したことがあるのは前者が主だった。確かに界隈内で締切を共有し、そこに合わせて足並みを揃えて出版できるという意味では最低限の役割を果たしていた。ただ、(抽象的な言い方をすると)「場」が欠けていると即売会の意義であるコミュニケーションが不足してしまう、と感じられた。そこで、自分たちで大きな手間をかけなくてもバーチャルな「場」が提供されているプラットフォームを選ぶ必要があった。
また、端末に要求されるスペックも考慮する必要があった。
UNDERTALEおよびdeltaruneのファンダムは、比較的若年層が多いように見える。そのため、参加者の中にはスマートフォンしか通信端末を持たない方もいるかもしれない。ComicVketではclusterがプラットフォームのひとつとして採用されていたが、PCであればメモリ8GB以上、スマートフォンだとiPhone 8やGoogle Pixel以上などで、若年層やスペックにこだわらない層にとってはややハードルが高いと判断した。
そのため、
- 2020年下半期時点で一定の使用実績がある
- 高いスペックを要求しない
という条件を満たす、pictSQUAREによるオンライン即売会を行うこととした。
……ただ、pictSQUAREは完璧なプラットフォームではない。実際、本番中にはアクセスが集中して一部で繋がらなくなるなどの不都合が発生したし、正直UIはやや使いにくかった。
それでも、結局他社が提供するサービスはpictSQUAREで用意されている最低限の機能を提供することができなかった。そのため、今回はpictSQUAREを採用した上で足りないものを補うための施策を検討した。
2. 足りないものを補う
プラットフォームを決定したことで、その中で提供されるものとされないものが明らかになった。
提供されるのはバーチャル空間でのアバター操作。それに、テキストによるチャット。その一方で、ボイスによるチャットは実装されていなかった。
そこで、今回はdiscordを利用した。ゲーム用チャットツールとして比較的親しまれている上にボイスチャット用のチャンネルを複数設定できる機能があったため、「スペースごとに話せるようにする」のは非常に便利だった。
具体的には、スペースごとにボイスチャンネルを設定し、希望者はその中で参加者とボイスチャットできるようにした。当日はそれなりのスペースで利用され、一定の要求を満たしていたように思われる。
また、pictSQUARE上のチャットは公開の場で行われ、ログは会場から退去してしまえば残らない。そのため、discordでもテキストチャンネルを用意し、場合によってはそちらでもテキストでコミュニケーションが取れるようにした。
本番当日は「ボイスチャットで話すのは気が引けるけどあの人とお話したい」という需要は思ったよりも多く存在していたからか、スケブのリクエストや雑談などのやり取りが活発に行われていた。
3. コミュニティを習熟させる
以上の仕組みを用意してみても、実際の感触が分からなければ参加するのにハードルが高いということは予想できた。
そのため、開催2ヶ月前の12月末に一度「テストプレイ」として有志にお声掛けし、参加費はこちら負担で試してもらった。
このテストプレイには14サークルが参加し、100人以上の参加者を集めることができた。皆様にはアバターなどの作成にご協力頂いたのみならず、なんと新刊を出してくださった方すらいらっしゃった。そのおかげで、多くの方が「試しに本を買ってみる」など実際の即売会らしいことを試すことができた。
たとえ企画を立てても、参加者の方の熱意がなければ魅力的なイベントにはならなかった。本番まで皆様にはずっと助けられており、感謝の念は伝えても伝えきれない。
テストプレイの模様は、事前に了承を取った上でTwitterで自由に投稿していただいた。目的としては、当日参加していない人でも様子を知り、興味を持ってもらえるようにするということがあった。
togetter.com
このSNSへの掲載方針は効果的だったように思う。実際、参加しなかった人からもSNS上で一定の反応は得られ、本番においてはこの数倍のサークル参加・一般参加者を集めることができた。
そのため、これ以降も「SNSへの共有を通してハードルを下げる」という方針を取ることにした。pictSQUARE上のイベントは撮影禁止の場合が多かったが、本イベントでは本番まで一貫して
というポリシーを設定した。
4. 会場を盛り上げる
pictSQUAREでは、バーチャル空間を歩き回る時のアバターや自身のスペースを自由に設定することができた。参加者ひとりひとりが原作の雰囲気に合ったデザインや自身で工夫したデザインを設定することでより会場の雰囲気が盛り上がっていったため、設定して頂くためにどのような取り組みを行ったか記載する。
店舗外観・アバター
基本的にイラストは描ける方は多いという性質を持った集団のため、テストプレイなどで一度試して頂いたのをきっかけに様々な工夫を凝らしたアバター・外観が生まれていた。
作成したデザインは積極的にSNSでハッシュタグを付けて投稿して頂くよう奨励することで、「自分もできるかも・やってみたい」と他の方にもイメージを付けて頂くことにした。
でけた〜本棚の在庫は元気があったら追加します #ゆあでたオンライン pic.twitter.com/r1vT9Z0p7l
— maple🏄🐹 (ネタバレ警報) (@MapleUndertale) 2021年2月9日
また、何名かの有志の方が他者も利用できるデザインを作成してくださったため、デザインに自信のない方でも原作からアレンジされたアバターを利用できるように作成したデザインはWebサイト上でも共有した。
2021utdrpetit.jimdofree.com
ただし、pictSQUAREではドット絵を利用していることから、原作の権利を侵害しないかという点については通常イラストよりも注意していただく必要があった。
参加者の方からご指摘を頂いたこともあり、本番前に素材を作成する上での注意点は文書として共有するようにした。
2021utdrpetit.jimdofree.com
会場
本番の2週間前、pictSQUAREに会場全体のデザインを変更する機能が追加された。
イベント会場の背景画像変更機能追加のお知らせです。
— pictSQUARE@オンライン即売会サービス (@pictsquarenet) 2021年2月15日
これまでイベント会場の背景画像は単一のものでしたが、イベント主催者の方にてイベント管理画面から背景画像を変更することが可能になりました。
詳しくはお知らせをご確認頂ければと思います。https://t.co/7mqeKLqLmy pic.twitter.com/eqfSz8usvu
本番数日前、時間はなかったものの「会場の雰囲気をより高めたい」ということで、協力を仰ぎつつ会場のあちこちに原作モチーフを設置し、「事前に見てみてほしい」と呼びかけた。
#ゆあでたオンライン 会場背景画像のスノーフルと川の制作をさせていただきました!!貴重な機会をありがとうございます...!❄️ pic.twitter.com/MY2qgaN9Cz
— ふるくと🥨 (@fructose_UT) 2021年2月26日
ゆあでた1日目開催おめでとうございます!🎉
— 湯浴み🚿 (@UYunomi) 2021年2月27日
会場の様々な場所にUT&DRイメージのスポットを作成させていただきました、是非会場を回って探してみてください
#ゆあでたオンライン pic.twitter.com/BCqk4Jt5eo
【#ゆあでたオンライン 会場準備中】
— Your Determination告知アカウント (@2021utdrpetit) 2021年2月25日
最近、pictSQUAREに「即売会の背景画像を変更する」という機能が追加されました。そこで、会場の一部に原作らしいモチーフを少しずつ取り入れています!
是非、事前に「時間外入場」してご確認ください!記念撮影も大歓迎です!https://t.co/P7Ynv8d1J3 pic.twitter.com/b7KV9pqTQM
この投稿を機に会場の準備が進んでいることを参加者が確認することで、参加者が自身のスペースを整える準備も一層促進されたように思える。
5. 所感
最終的に、本番では540名の参加者を集めることができた。
今回「オンライン即売会」のみだとここまで多くの人は集まらなかっただろう。オフライン・オンライン同時開催によって、まずは慣れ親しんだオフライン版のみに参加を検討していたが、情勢の変化によってオンライン版への参加も追加で検討された方が多く見られた。
オフライン版だけの開催であれば欠席したり無理して参加される方が多かったかもしれない。逆にオンライン版だけであれば初めてのシステムに対して敷居が高く、そもそものこのイベントに締切を合わせる参加者は少なかったかもしれない。互いの欠点を補うことで、結果的には単独開催よりも質の高い即売会にできたかと思う。
6. 反省点
通販方法の(ある程度の)統一
現在この界隈では、慣習的にアリスブックスへの委託やBOOTHによる自家通販が一般的である。そのため、当日は
- pictSQUAREで公式に提供されているシステム(pictSPACE)による自家通販
- 主にBOOTHを利用した自家通販
- アリスブックス、とらのあな等書店への委託による通販
などサークルごとに通販方式がバラバラであった。
それでも、どの機能を利用するかは界隈初のオンライン即売会で統一できるほどの知見が蓄積されていなかった。無理に統一することでサークル側のコストが増えたり、慣れていないシステムは使わないことによる機会損失が発生したりすることを考慮し、今回は各々サークルが今まで慣れたシステムを使ってもらう方式とした。
強いて言えば、アリスブックスなど書店に委託した時の販売開始時刻などは可能な限り統一するように案内した方がよかったかもしれない。次回以降主催する方は、検討しておいて欲しい。
pictSQUAREの利用方法周知
2021年2月時点で、pictSQUAREの設定方法は公式でそこまでドキュメントが整備されていなかった。自分自身、有志がまとめてくれた記事によってようやく理解できた部分はある。
そのため、即売会の運営としてはもう少し使い方を周知してもよかったかもしれない。ただ、あくまで「調べればわかる」ものではあること、また自分自身は参加者から参加費を徴収してはいなかったため(そして後述の「事情」により余力が残っていなかったため)、自身ができる範囲に留めることにした。
現在はもう少し公式ヘルプも充実しているため、そこまで困らないかもしれない。
Twitterなどで積極的に使い方を周知してくださった参加者の皆様には、感謝の念をお伝えしたい。
おわりに
同人誌即売会を企画するのは始めてのことであったが、参加者・協力者様のおかげでなんとか無事に終わらせることができた。
オンラインやオフラインにおいて作ることができた新しい出会いの機会は、本当に楽しいものだった。
コアタイム夜の部も終了です!ですが、閉会まではまだまだ時間があります。是非めいいっぱい楽しんでくださいませ! #ゆあでたオンライン pic.twitter.com/9DW4bcJUSV
— Your Determination告知アカウント (@2021utdrpetit) 2021年2月27日
特にオンライン即売会について、界隈として今回の経験を得ることで次回以降の実施はしやすくなったのではないかと思う。ファン活動を形にする場を絶やさないためにも、今後も志を持つ方によってこの流れが続くことを祈っている。
Special Thanks
湯浴みさん、ふるくとさんにはpictSQUAREの会場や記念冊子のデザイン・編集、そしてそれ以外の数え切れない諸々において多大にお世話になりました。
この場をお借りして、御礼申し上げます。